【徹底解説】J1に所属するための財務基準とは?~「3期連続赤字の禁止」と「債務超過の禁止」~

財務基準とは

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Jリーグに所属しているクラブは、Jリーグクラブライセンス制度という資格制度を乗り切らないといけない業を背負わされていることを皆さんはご存知でしょうか?

この制度は2013年から実施されており、J1・J2クラブライセンス交付規則では、以下の5分野で審査基準項目を設けており、全部で61項目存在します。(2024年6月時点)

  • 競技基準:11項目
    育成部門の整備や選手との契約締結義務など
  • 施設基準:9項目
    スタジアム、練習場の確保やそれらのスペックなど
  • 人事体制・組織運営基準:26項目
    部門別担当者の配置など
  • 法務基準:7項目
    競技規則、Jリーグ規約の遵守義務など
  • 財務基準:8項目
    適法かつ適正な決算、監査の実施など

そしてこの基準の中で、以下のような等級が設定されています。

  • A等級
    ライセンス申請者による達成が必須のもの。A等級基準の未充足は、当該ライセンス申請者へのJ1・J2ライセンス等の交付拒絶事由を構成するが、当該ライセンス申請者に対して本交付規則第8条に定める制裁は科されない
  • B等級
    ライセンス申請者による達成が必須のもの。B等級基準の未充足は、当該ライセンス申請者へのJ1・J2ライセンス等の交付拒絶事由を構成するものではないが、当該ライセンス申請者に対しては本交付規則第8条に定める制裁が科される
  • C等級
    ライセンス申請者による達成が推奨されるものであり、将来において、達成が必須のものと改められる可能性があるものである。C等級基準の未充足は、当該ライセンス申請者に対するJ1・J2ライセンス等の交付拒絶事由を構成するものではなく、また、当該ライセンス申請者に対して本交付規則第8条に定める制裁が科されるものでもない

とどのつまり、A等級の項目はJ1リーグに所属するためには必達項目であり、これが結構厳しいものに…。特に施設基準と財務基準は各クラブ悩まされており、施設基準のA等級である入場可能人員規定をクリアするスタジアムを所有するために行政に補助金を要求しており、ネットでは「税リーグ」と叩かれております(涙)

「税リーグ」と呼ばれている理由については以下のページで詳しく説明しておりますので、気になる方はご覧ください。

しかし、スタジアムなどの施設基準は税金というウルトラCに頼ることでワンちゃんあるのですが、クラブにとって何とかしないといけないのが財務基準…。今回の記事は、降格しないために是が非でも遵守しないといけない財務基準について詳しく解説していきます!

目次

財務基準について

2024年現在、J1・J2クラブライセンス交付規則の基準は以下の8項目が設定されています。

基準番号等級項目
F.01年次財務諸表(監査済み)
F.02中間財務諸表(レビュー済み)
F.03選手移籍活動によって生じる他のサッカークラブに対する期限経過未払金の不存在
F.04従業員や社会保険当局、税務当局に対する期限経過未払金の不存在
F.05ライセンス交付の決定に先立つ表明書
F.06予算および予算実績、財務状況の見通し
F.07ライセンス交付後の重要な後発事象の通知義務
F.08財務状況の見通しの修正義務
https://aboutj.jleague.jp/corporate/assets/pdf/regulation/license/j1-j2_club_license_Issuance_rules.pdf

財務基準は全てA等級で規定されているためすべて遵守しないといけないのですが、これらの中で最もしんどいのが「年次財務諸表(監査済み)」です。

この「年次財務諸表(監査済み)」の細則の判定の箇所には、以下の記載があります。

(2) 提出された財務諸表に基づいて審査を行い、以下のいずれかに該当する場合は基準F.01を満たさないものとする。
3期以上連続で当期純損失を計上した場合(ただし、ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日現在の純資産残高がライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度の当期純損失の額の絶対値を上回っている場合は本項目に該当しないものとみなす)。
② ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日現在、純資産の金額がマイナスである(債務超過である)場合

https://aboutj.jleague.jp/corporate/assets/pdf/regulation/license/j1-j2_club_license_Issuance_rules_and_operational_regulations.pdf

ここに記載されているのが、ネットでよく言われている「3期連続赤字の禁止」と「債務超過の禁止」の出所です。そして、「F.06 予算および予算実績、財務状況の見通し」では、進行中の年度の決算の見通しも判定の対象になるという記載があるため、シーズン途中で「3期連続赤字」もしくは「債務超過」になる可能性が高いと審査された場合、来シーズンのライセンスは交付されないので、クラブは健全な運営が求められます…。

それでは「3期連続赤字の禁止」と「債務超過の禁止」について、より詳細に解説していきます。

「3期連続赤字の禁止」と「債務超過の禁止」について

3期連続赤字の禁止を記載している細則を嚙み砕くと以下の通りになります。

  • 前期の決算で3期連続赤字になった場合、次シーズンのクラブライセンスは交付されない
  • 前期の決算で3期以上連続で赤字が続き、その最終年度の純損失額が純資産額を上回っている場合、次シーズンのクラブライセンスは交付されない。(J3は適用外)
  • 前期の決算で債務超過に陥った場合、次シーズンのクラブライセンスは交付されない

つまり、3期連続赤字かつ純資産よりも損失額が上回ってしまった場合もしくは前期の純資産がマイナスになってしまった場合のJ1クラブはクラブライセンスが交付されないことになります。逆を言えば純資産が多いクラブは3期連続赤字でも許されるルールとなっています。

川崎、FC東京、浦和、鹿島など純資産が多いクラブには有利ですが、札幌、鳥栖、福岡といった純資産が少ないクラブにとっては死活問題となってきます…。

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2020年の新型コロナウィルスの影響を加味して、Jリーグクラブライセンス制度では「3期連続赤字の禁止」と「債務超過の禁止」を適用外とする特例措置をとっておりましたが、21年度に終了。22年度から猶予期間がスタートしており、22年度から3期連続赤字のカウントが再開されており、24年度末に3期連続赤字に抵触する可能性が出てきております。また、24年度には債務超過(純資産のマイナス)が解消されている必要もあります。

と、JリーグのHPに掲載されているのですが、2024年1月1日に改定された細則には以下の通り記載されており、実際に赤字カウントされ始めるのは24年度から、債務超過について咎められるのは25年度の申請からのようです。(なぜ、Jリーグから正式なリリースが出てないのか不明…。)

【赤字について】
本項目は、2027年のライセンス申請において2024年度決算を1期目として適用を開始するものとし、2026年までのライセンス申請においては適用しない。
【債務超過について】
本項目は、2026年のライセンス申請から適用するものとし、2025年までのライセンス申請においては適用しない。また、2025年までのライセンス申請においては、ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日において債務超過であったとしても、さらにその前年度末日において既に債務超過であって、ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日において債務超過額がその前年度の債務超過額と同額かまたは当該債務超過額より減少しているときは、本項目に該当しないものとみなす

https://aboutj.jleague.jp/corporate/assets/pdf/regulation/license/j1-j2_club_license_Issuance_rules_and_operational_regulations.pdf

この辺の各クラブの財務状況は別でまとめたいと思っておりますが、せっかく試合で勝ち点をもぎ取って残留できたとしても、財務状況次第ではクラブライセンスが交付されず、降格という危険性がある世界が近づいているわけです…。

さいごに

Jリーグのクラブがセンシティブに気にしている財務基準について、その中でも「3期連続赤字の禁止」と「債務超過の禁止」を中心に解説させていただきましたが、いかがでしたでしょうか?

財務状況が安定していないクラブ程、降格争いに巻き込まれがちなのが世の常なので、勝ち点だけでなくクラブの財務状況を意識しないといけないので、ファンは大変…。しかも、試合であれば応援することができますが、財務状況に関しては、エンジェル投資家でもない限り、どうしようもないので、無力感が凄そうです…(涙)。

また、26シーズンからJリーグは「秋春制」に移行することが決定されており、新潟や札幌といった雪が降る地域のクラブは、これまでの売上が確保できるのか?という不確定な要素も襲い掛かってきます…。

できればサッカーの中身だけで降格・昇格は決めてほしいと願っておりますが、やはりプロである以上、ビジネスの側面も求められるのは仕方ないこと…。ただ、そもそもクラブが日本にありすぎなのでは?など思うところもあり、日本でサッカーをビジネスとしてうまく運営するためには、どうしたらいいんでしょうね…

わーわー言うとります!お時間です!さようなら!

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