皆さんは税リーグという言葉をご存知でしょうか?
これはJリーグクラブが自治体から多額の税金による支援を受けている現状を揶揄したネットスラングです。その主な理由は、スタジアム建設費や運営費などに多額の公的資金が投入されているためで、「J」を「税」でもじっています。
そして、この公的資金でよく報道されるのがスタジアムの建設費です。
今回はサッカースタジアムにどれだけの税金が投下されているのかということを2024年2月1日にオープンしたエディオンピースウイング広島を具体例として、徹底解説したいと思います!!
エディオンピースウイング広島の建設費と税金投入の背景とは?
2024年、Jリーグの新たなシンボルとして誕生したエディオンピースウイング広島。
開幕戦ではサンフレッチェ広島が浦和レッズを2-0で撃破し、スタジアムの門出に華を添えました。この記念すべき一戦で2ゴールを挙げた大橋選手は、ヒーローインタビューで次のように語っています。
「勝利に貢献できて嬉しいです。多くの方が尽力して完成したこの素晴らしいスタジアムのピッチに立ち、恥じないようなプレーをしようと、この一戦に懸けて望みました」
彼の言葉通り、このスタジアムには多くの人の尽力と莫大な建設費用がかかっております。
総工費は約270億円!!
この莫大な費用、すべてサンフレッチェ広島が自己負担したわけではありません。日本経済新聞の記事によると、以下のような公的資金が投入されています。
- 国庫補助金:80億円
- 広島県・広島市の負担:100億円
なんと、半分以上の180億円が税金によって賄われているのです。
なぜ、サッカースタジアムにこれだけの税金が使われているのでしょうか?
その理由は「公共性」です。
行政側の説明では、スタジアム建設は次のような目的を担っています。
- 国際競技大会の開催拠点としての整備
- 地域スポーツの振興
- 子どもたちに夢を与える教育的効果
- 地域経済の活性化
要するに「社会的意義があるから税金を使ってもOK」というのが基本的なロジックです。しかしながら、こうした大義名分が市民全員に納得されているとは限りません…。
広島県の公式ウェブサイトでは、スタジアム建設に関する検討経緯や財政負担の内訳などが詳細に公開されています。税金を使う以上、情報公開は当然の責務といえますが、実際にどれほどの県民が資料をチェックしているかは不明です。(一部では「行政の自己満足では?」という声も一部で上がっているみたいです。)
というわけで、サッカースタジアム建設に結構な税金が投入されていることが税リーグと呼ばれる一因なのですが、それに拍車をかけているのが「Jリーグスタジアム基準」という存在です。個人的にこのルールまで知ったうえで批判している方はサッカーめちゃくちゃ好きでは?と思いますが、このルールがあることで、クラブと自治体との間で摩擦が生じるケースも少なくありませんので、次に「Jリーグスタジアム基準」について解説していきます。
Jリーグスタジアム基準と税金問題
JリーグにはJリーグスタジアム基準というものが設定されておりまして、クラブライセンスを取得するために項目を満たす必要があります。主なA等級(必須)項目は次の通りです。
項目 | J1 | J2 | 主な意図 |
---|---|---|---|
入場可能数 | 15,000人以上 | 10,000人以上 | 興行規模の担保 |
天然芝ピッチ | 必須 | 必須 | 競技品質 |
屋根カバー率 | 観客席の3分の1以上 | 同左 | 観戦快適性 |
バリアフリー席 | 全体の0.5%以上 | 同左 | アクセシビリティ |
ルールを勝手に決めるだけなら大した問題ではないのですが、以下の問題点があります。
- 基準のクリア=大規模改修もしくは新設が必須
観客席の増設・屋根新設・トイレ増などで100〜200億円規模の投資になるケース - 専用スタジアムは稼働率が低い
サッカー以外の利用が限定的で、維持費(芝生管理・電気代)が高止まり - “独自ルールのための公金”という反感
サッカーに関心の薄い層ほど「民間興行を税で支援?」と感じやすい
揉めている具体例をいくつか以下にまとめてみました(笑)。
クラブ名 | 課題 | 行政との動き・世論 |
---|---|---|
ファジアーノ岡山(J1) | 現スタジアムはJ1基準ギリギリ(16,500人)だが、ゴール裏の芝生席も狭いこと、スタンドの屋根の敷設も基準より足りないことから、Jリーグから改善が望ましいとされる要望が出ている。平均入場者数は約9,000人(2024年)。 | 県・市に180〜200億円のスタジアム建設支援を要請中。「動員に見合わない」「費用対効果は?」という声が上がる一方、若者を中心に賛同の声も。 |
ブラウブリッツ秋田(J2) | ソユースタジアムはキャパシティや設備基準を満たさず、芝・観客席の一部改修が必要。動員は平均約2,000人。 | 秋田県知事が「税負担が大きい」と難色。SNSでは『税金の無駄』という声が多数。クラブは「地域活性につながる」と粘り強く説明中。 |
湘南ベルマーレ(J1) | 平塚市総合公園内のShonan BMWスタジアムが屋根・観客席配置・バリアフリー要件未達。J1ライセンスは条件付き。 | 神奈川県議会で「改善は必要だが予算が足りない」と議論に。市民からは「J1クラブなのに基準未達は恥ずかしい」「税金で改善すべきか疑問」と賛否両論。 |
Jリーグスタジアム基準と地域の市場規模が一致していないこと、稼働率が低いこと、その割に巨額のコストがかかることなどが税リーグと揶揄される要因になっていることがわかるかと思います。
【Jリーグと税金】スタジアム建設は誰のため?“税リーグ”批判をどう考えるか
Jリーグのスタジアムと税金の関係について、具体例を交えながら紹介させていただきました。
私自身はサッカーファンとして、新しいサッカー専用スタジアムが完成すると素直にワクワクしてしまいます。ただ「税金」が使用されると聞くと、サッカーに興味ない人に対して申し訳ない気持ちになるのも事実です。
サッカー専用スタジアムは観戦のしやすさは抜群ですが、サッカー以外の使用用途が非常に限定的になるという課題がありますし、そもそも日本人の人口やサッカー人気を加味した時に「クラブ数が多すぎるのでは?(2024年時点で60クラブ)」という意見もあります。
秋田の実例を紹介させていただきましたが、平均動員数が2,000人程度のクラブに対して、Jリーグスタジアム基準を満たすためだけに何十億円もの税金が投入されるとなると、サッカーファンの私ですら疑問なので、地元住民の理解を得るのは簡単ではありません。
さらに、建設後に待っているのが「運営・維持管理費」という大きなハードルです。
多くのスタジアムは完成後の運営を自治体が痛くする「指定管理者制度」を採用しています。Jクラブの運営会社や関連団体が指定管理者となるケースが多く、その費用を行政が毎年支払う=税金でカバーしているという実態があります。
つまり、「スタジアム建設にかかった税金は一度きり」ではなく、「その後も毎年税金が支出され続ける構造」になっているのです…。この指定管理料について詳しく知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。スタジアム運営の”裏側”を知る上で必読です。

税金への依存を減らす方法は、マルチイベント(eスポーツや音楽フェス)などを積極的に誘致したり、スタジアムのネーミングライツで稼ぐなどいろいろ方法があるかと思いますが、根本解決としてサッカーがもっと人気になって日本の文化になることだと私は考えます。
これはサッカーファンにとっても、日本サッカー協会にとっても重要なテーマだと思いますが、みなさんはどういった課題・解決策を思いつきますか?ちなみに私が考える一番の課題はメディア露出の少なさです。
DAZNのおかげでJリーグ全試合が好きなときに好きなだけ見れるようになった一方で、地上波でJリーグが見れる機会は激減し、代表戦ですら地上波で見れない日もあるほどです。SNSやYoutubeなどを活用してはいるものの、サッカーに興味ない層を取り込むためにはどういった策が有効なんだろうか…。みなさんのお考えをコメントなどで共有してくださると大変助かります!!
わーわー言うとります!お時間です!さようなら!
コメント
コメント一覧 (6件)
>野球の人気が低下している中でサッカーの地位を上げるチャンスだと個人的には思っておりますが
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球場の年間使用料も述べた方がいいんじゃないの?
税リーグはまともに払ってないよ
鹿島だかレッズだか人気球団でも年間使用料1億も払ってないって元社長がなんかの記事で言ってたよ
使用料はチケット代の5~10%くらいに免除されてるとか
日ハムが26億とか払ってたそうだけど、札幌のサッカーチームは数千万円程度
試合数が4分の1ってことを考えても安すぎるんちゃう
これじゃ全てのサッカースタジアムが赤字になるのは当たり前で、その赤字を税金で補填
そら税リーグ言われるわ
わずか月2回(それもシーズン中のみ)しか開催されないホームゲームのために、J1-J3の60球団がすべて総天然芝の独自球場を持つ必要があるのか?と問われると、まあ到底「はい!」とは言えないっすよね。試合数の多い野球ですら、以前は東京ドームを巨人と日ハムでシェアしていたように、各地域の拠点都市に上等のスタジアムを作り、そこを5-6球団の資金持ち寄りで管理すれば税金投入も必要ない。そのくらいやっても開催頻度から言って「最低限ペイできる」くらいにしかならないとは思いますが、やらないよりは良いかと。リーグ本部の理想は理想として、基本は営利企業なんですからまずチーム運営・スタジアム運営の両面で黒字を出して初めて1人前のプロスポーツでしょう。人気が出て財務に余裕が出たら、新球場なり拡張なり既存施設の改修なりを考えれば良いわけで。「サッカーが文化」というのは否定しませんが、その論法だと他のスポーツや芸術だって文化ですし、現状でサッカーだけが特権的地位で他スポーツよりも多くの血税が投入されている現状を正当化できません。
> それはサッカースタジアムの建設は、スポーツに関する競技水準の向上及び国際競技大会等の開催が可能となる拠点施設の整備の促進を図ることに繋がるからです。
これ東京都心ですら国際Aマッチ基準のサッカー専スタが出来てない現状はどうにかしたほうがいい。
今後東京都心で専スタは絶対必要。観客数で①野球②バスケ③サッカーという、バスケに抜かされたというデータもある。そして野球は相変わらず強い。WBC日本優勝からの久しぶりの阪神優勝と、野球人気が再燃しつつある。高校野球の人気も未だに強いし。
地方は広島市のような政令市や政令市が近隣にあるところ(サンガスタジアムや吹田スタジアム)以外では作らなくていいだろう。
野球人気って小中学生くらいの競技人口割合減ってるだけで観戦するファンは増加傾向にあるんじゃなかったっけ
地上波放送は減ってもネット中継はあるし、プロスピAなんかの野球ゲームも10代20代がメインのプレイヤー層だったような
本当に野球人気って低下してんのかな?むしろサッカーが上向いたような話を全く聞かないけど
ファジアーノ岡山のホーム年間観客数は岡山県立美術館の年間入館者数にも負けてるくらいのレベル。そのくせJ1基準のスタジアム建築費用は美術館新設の2~3倍かかる。
サッカー以外にはグラウンドが使えない、プロの試合を優先するためアマチュアサッカーで使うこともほぼできない。そこまでしたプロの試合も客が全然来ない。
ファジアーノは今のスタジアムですら席の半分は売れ残っている。なぜ大量の税金をかけて新築し、さらに空席を増やさないといけないのか。